カギが歪んでいるけれど、まだまだ使えそうです

昔Mr.マリックのマジックが流行った頃、私はまだ子供だった。給食のスプーンで「きてます」と言いながらスプーン曲げをしようとした記憶が懐かしい。何人かスプーン曲げできる子もいたけれど、私はいくらやってもできなかったので、それ以来マリックの番組はすっかり見なくなってしまった。

それから十数年経ち、私はOLになった。その会社で仲良くなった同期と週末になるたびに会社近くの繁華街に飲みに行くようになった。その同期数人と昔の話で盛り上がった時、Mr.マリックのスプーン曲げの話題になった。やはりそのときも、同期のうちの何人かは簡単にスプーン曲げをすることができたのに、私を含む数人はできなかった。すると私同様スプーン曲げのできなかった同期の一人が、スプーン曲げできた人たちに挑発し始めた。「スプーンじゃなくてカギを曲げることはできる?」と。そこにいた全員が自分のカギを取り出し、曲げようとしたけれど、誰一人として曲げることはできなかった。

するとその中の一人が私のカギを横取りし、「これなら曲げられそうだよ」と力任せに私のカギを曲げようとした。「いやいや、無理でしょ」と思った瞬間、私のカギはまるで粘土でできているかのようにぐにゃりと曲がってしまったではないか!「あーっ!」私はあんぐりと口を開けた。「ちょ、ちょっとどうしてくれるのよっ!」すると曲げた本人は悪びれもせず、「また戻せるから大丈夫だよ」と言って再びカギに力を込めた。ところが、カギはびくともしない。「あれ?あれ?」と言ってカギを曲げた同僚は急に慌てだした。それから飲み屋のお兄さんから工具を借り、数人がかりで何とか少しは戻せたものの、カギはまだ歪んだままであった。

その日の飲み会から帰り、私は恐る恐るカギを使ってみると…何とか無事開けることができたのでホッとした。だけどやっぱり、私はMr.マリックが好きになれないなとつくづく思ったのだった。