僕の指がカギの代わりなのさ

finger_key僕が子どもの頃の話です。学校を挟んで駅の反対側にある繁華街は、飲み屋やいかがわしい店も多く、僕たち子どもは行ってはいけないと、学校からも親からも言い聞かせられていた地域でした。真面目な小学生だった僕にも、当然縁のない場所でした。ところが春休み中のある時、初めて行く友達の家までの道に迷い、いつの間にかその繁華街に入り込んでしまったことがありました。

横浜の鍵屋さん

平日の昼前なので繁華街は人影もまばらで、僕はそれ程怖いとか、禁止されている地域に足を踏み入れてしまった罪悪感もありません。ただ出口を探してのんびり自転車をこいでいると、ネコが1匹、日向ぼっこしているお店の前を通りかかりました。そのお店は飲食店ではなく、靴の修理や合い鍵を作っているお店のようでした。ネコを触りたいと思い自転車から降り、自転車を停めてネコに近づくと、お店の扉が静かに開いて、ネコはすぐにお店の中に入ってしまいました。代わりにお店の前に立ったのは店主と思われるおじいさん。僕の姿を見つけると、笑顔になりこのあたりに子どもなんて珍しいと笑いました。

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それがきっかけで、その後おじいさんのお店には何度か遊びに行くようになりました。行くたびにお茶をご馳走になったり、ネコと遊んだり、おじいさんが修理する靴や沢山の鍵、工具なども見せてもらいました。特に印象に残っているのは、お店の金庫のような物の扉についていた錠前です。その錠前に鍵はなかったのですが、おじいさんがちょっと触るとすぐに開錠することができます。しかし僕がいくらいじっても、それは決して開かない錠前なのです。おじいさんはいつも、僕の指がカギの代わりなのさといたずらっぽく笑っては、その扉を開け閉めしていました。

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お店にはいつの間にか行かなくなり僕は大人になってしまいましたが、あの時のおじいさんとあの鍵は、今はどうしているだろうと思いだすことがあります。